今回紹介する作品は「ダンケルク」(Dunkirk)です。
2017年に公開されたイギリスの映画です。
ダンケルク映画の解説
1940年、第二次世界大戦のフランスの町ダンケルクでは、イギリスとフランスの連合軍が苦戦していました。
ドイツ軍に追い詰められていたので、民間船の協力を得て決死の大救出作戦が決行されます。
「ダンケルク」を手がけたのは、クリストファー・ノーラン監督。
ダークナイトやインセプション、インターステラーなどを手掛けた監督です。
監督の持ち味である実写映像にこだわった映像美は、「ダンケルク」でも活かされています。
「ダンケルク」のストーリーあらすじ
あらすじとしては、3つの物語が交差するので少しわかりにくいところがあります。
イギリス、フランス、カナダ、ベルギーの連合軍は、1940年5月、10日間あまり、第二次世界大戦の初期、フランス海岸であるダンケルクにて、ドイツ軍に完全包囲され、連合軍は撤退を余儀なくされました。
イギリス軍の兵士であるトミー二等兵は、ダンケルクの街にいて、ドイツ軍の銃撃によって分隊が全滅し、武器を失いました。
港には英国の救助船があり、英国の兵士が乗船を待っていました。
フランス兵が乗船する余地はありません。
トミーは、兵士を浜辺に埋葬する任務をしていたギブソンという無口な兵士に出くわし、彼らに加わります。
負傷兵の救出が優先されるため、トミーとギブソンは負傷兵を乗せた担架を担いで救援船に乗り込みます。
しかし、出港直後にドイツ軍の攻撃で沈没し、ギブソンはなんとか脱出します。
一方、政府からダイナモ作戦のための民間船徴用のため、自作の小型船を徴用する命令を受けたドーソンは、息子のピーターとピーターの知人であるジョージと共にダンケルクに渡り、イギリス兵を母国に輸送しました。
その後、スーパーマリンと彼のスピットファイア戦闘機に乗ったイギリス空軍パイロットのファリアとコリンズの小隊が、ダンケルクでの撤退行動を防ぐためにドイツ空軍への阻止攻撃を行います。
息子が空軍で殺されたドーソンは、彼の世代が戦争に行くことを決め、若者が戦死したという事実に心を痛めました。
不時着したパイロット(コリンズ)を救出し、乗船させます。
一方、トミーたちはオランダ商船に乗って帰ろうとするが、船はドイツ軍に撃たれてしまいます。
すべての軍艦が沈没した一方で、多くの小型民間船が救助に来て、残った兵士は、イギリスに戻ることができました。
「ダンケルク」の見どころ
特に注目してほしいのは二つです。
まず一つ目は、編集のトリックです。
「ダンケルク」は、陸海空と三つの物語が語られています。
それらがラスト間際に一つに結びつくという群像劇となっているわけです。
それぞれの話で時間の経過スピードが異なるという特徴があります。
どういうことかと言いますと、本作は上映時間が106分となっています。
陸の物語は、主人公の一週間の物語、そして、海の物語は、主人公の一日の物語が、そして、空の物語は、主人公の一時間の物語が106分の中で描かれています。
3つの話すべて時間軸通りに進んでいきます。
けれども、進むスピードが違うので、こっちの話でまた語られていないのに、こちら話では、もう登場したりだとかの場面展開があります。
すこし、頭がこんがらがりますが、鑑賞してみれば、感覚的に意味はわかってくると思います。
そしてもう一つの注目ポイントは、主人公の過去が語られていないと言うことです。
よく映画レビューなんかで、主人公の行動原理がわからない。
だから感情移入できないだとか、主人公がなぜヒロインを好きになったのかがわからない。
その描写が薄いなんて言われていますけれども、「ダンケルク」にはそういったものは一切登場しませ。
主人公がどこの誰で、どんな気持ちをいだいて戦争に参加したのか?
そういったことは一切登場しません。
家族がいるだとか、そういったことも不明です。
だからこそ感情移入ができるわけですね。
よく言われていることとは真逆の現象です。
主人公が誰でもないからこそ、観客の誰もが主人公を自分と重ねられると言うわけですね。
家族がいる方にとっては、主人公は家族のために戦っているように見えてくると思います。
夢に向かって行動している人にとっては、主人公は戦争によって夢を奪われたように見えてくると思います。
他の映画にはない感覚をぜひ体験してみてください。